奇跡の連鎖・第一羽

本投稿は2007年12月から他のブログでつづったものです。2013年7月5日、講談社から発売の著書「奇跡はつばさに乗って」は、このブログ原版が元になっていますが、著書とブログ版は同じものではありません。このHPでは、原版ブログの「第1羽」のみ公開しております。

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源 和子 (Kazglobe)

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 第1羽: 心優しきあなたは今どこに?千羽鶴を折った「あなた」へ
2007年12月02日15:21 by Kazglobe

ほんの小さな思いやりが、多くの人の人生を変えてしまうことがある。その 「奇跡の連鎖」 シリーズを、数回にわたってつづってみたい。
私の人生を変えた瞬間がいくつかある。
あのとき。
そう、航空会社の手違いで、来る予定のなかったニューヨークへ初めて舞い降りた、あのとき。

搭乗していた飛行機の窓から目の中に飛び込んできたのは、今は亡き世界貿易センター、通称「ツインタワー」。
夕陽に照らされていたその壮大な姿は息を呑むほど美しかった。
JFK空港に降り立った瞬間、私は 「ここに住む」 と直感で感じた。
あれは、「導き」だったのか?

それから、「あの、悪夢の瞬間」。
2001年9月11日。

見慣れていたツインタワーの姿は一瞬にして崩れ去ってしまった。
多くの尊い命が散ってしまった。
まだ、会ったことのない「同じ街の住民」の命が。
ツインタワーへ向かう多数の消防士の姿が、今でも目に焼きついている。

悲しみ、怒り、恐怖、絶望。 どこにもぶつけようのない嗚咽の混じった感情。
体の一部をもぎ取られたような喪失感。
あの日、私は、パニックで麻痺したマンハッタンから、這うようにして逃げた。

それまでずっと、「外国人」として、都合よくニューヨークに暮らしていた中途半端な自分。
あの瞬間、私はもはや「部外者」ではなくなった。
自分が、「ニューヨークの市民」であることを思い知らされたのだ。

あの瞬間、逃げたはずの自分。
なのに、9.11以降、気がつけば、くすぶる煙がたちこめるテロ跡地へ向かっている自分がいた。
何故かわからない。足が勝手にテロ跡地へ向かっていた。
「だからって、非力な自分に何が出来る?」
失われた多数の命を思うと、心が張り裂けそうだった。叫びたくても声にならなかった。

そんな中、テロ跡地を囲むフェンスにあった物が、私の目をとらえた。
それは星条旗や花に混じって、フェンスの網目にさされていた「千羽鶴の束」。
ここにも、そこにも、あそこにも!
折り主の名前はない。誰が折って、置いていったのか不明。
この時、無名の人が置いていった「小さな思いやり」が、「奇跡の連鎖」を引き起こすのを誰が予想できたのだろうか。

テロ跡地周辺に置かれていった花、星条旗、メッセージは、捨てられずにWTC(世界貿易センター)跡地のスタッフによって集められ、大切に保管されていた経緯を知る人は少ない。
その収集物の中に千羽鶴の束も含まれていた。(よくぞ、保管してくれていた!) 雨、風にやられ、折鶴の形や色も、くずれているものもあった。

拾われた折鶴の束を目にした別のスタッフ。
「これは一体、何?」
「オリガミ? 鳥みたいだね」

奇跡の連鎖は続く。

この後、9.11遺族会の代表が、東京へ招かれる。地下鉄サリン事件の被害者の遺族と面会するため。
偶然なのか、サリン事件の遺族は、9.11の遺族代表に「広島へも行くように」とすすめた。足を伸ばした広島で、9.11遺族会代表者が目にしたのは、平和記念公園のいたる所にあふれていた千羽鶴の束、束、束。
「これは・・・・。 あのテロ跡地に置かれていた折鶴と同じ物じゃないか!」
このとき、彼らは「世界平和を願う」千羽鶴の意味を知らされ、呆然と立ちすくむ。ニューヨークへ戻った9.11代表らは早速、広島で目にしたものを、関係者へ伝えた。その中に、WTC追悼施設「トリビュート・センター」の展示担当の女性スタッフがいた。
彼女はその話を聞いて、即座に申し出た。
「平和のメッセージを伝えるために、トリビュート・センターに、千羽鶴展を常設しましょう!」
「どうやって?」
「テロ直後に置かれていった千羽鶴が数束あるでしょう。あれを展示しましょう」
「でも、あれだけじゃ・・・・それに、あれは雨に降られてかなりダメージを受けているし・・・・」
「大丈夫。あの折鶴以外に、もっと数を増やす方法があります。追加の鶴を折れる人たちを知っています。その人たちに頼みましょう」
「誰なんだ、その人たちって?」
「日本にいる9.11日本人犠牲者のご遺族の皆さんよ。 この折り鶴のプロジェクトにご協力いただけるか、頼んでみましょう」

そして、それは実現し、見事な万羽鶴が日本から送られてきた。

2001年、秋から冬にかけて、テロ跡地に「あなた」が残していった千羽鶴。
私は「あなた」の名前を知らない。どこの誰なのか知らない。
でも、「あなた」の折った折鶴が、どんな「奇跡」を起こしたのか、私は知っている。


同時多発テロ直後、WTC跡地で見つかった千羽鶴の束。 提供者不明 (展示中)

「あなた」の千羽鶴は、日本人犠牲者のご遺族が折られた千羽鶴とともに、
テロ跡地の追悼センターに「常設」されることになったのです。
世界中から人が集まるこのWTC追悼センターに「世界平和のシンボル」 として。


上の千羽鶴がきっかけとなって追加寄贈された折り鶴。提供者: 9.11日本人犠牲者のご遺族、同僚、学童の皆さん (展示中)

折り鶴を折った心優しき「あなた」へ。
「あなた」は 「悲劇」の中から 「奇跡の連鎖」を呼び起こしたのです。
そして「この奇跡」は、もっともっと、大きな「うねり」となって、広がっていくのです。

ジャパン・タイムズ記事
「世界貿易センター追悼センターに、万羽鶴が常設展示される!」
The Japan Times featured an article on 10,000 paper cranes at the 9.11 Tribute Center
http://www.japantimes.co.jp/text/nn20070412a6.html

★皆さまへのお願い★
もし、同時多発テロ直後にテロ跡地に千羽鶴を置いていった方をご存知でしたら、kazglobe@gmail.com まで情報提供をお願いできますか。

世界貿易センター跡地・9・11追悼施設「トリビュート・センター」
Link to Tribute WTC 9.11 Visitor Center  http://www.tributewtc.org/index.php

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この続きをお読みになりたい方は、著書「奇跡はつばさに乗って」(講談社)でご一読ください。

本書の目次:

 第1章: テロ跡地に舞い降りた千羽鶴

 第2章: 奇跡を引き起こした少女

 第3章: 思いやりを受け取ったニューヨークの子どもたち

 第4章: ヒロシマと9.11をつないだ贈り物

 第5章: 手渡されたリスト

 第6羽: 敵と友
元・神風パイロットがNYを訪問。元・米兵と再会、固い友情を築く!

 第7章: あなたはここまで赦(ゆる)せますか

 第8章: 被爆者とパレスチナ人少年

 第9章: 叔母さんの祈りを世界に届けます 

 第10章: 鶴と被爆ピアノ

 第11章: トルーマン元大統領の孫の決断

 第12章: ヒロシマとパールハーバー(真珠湾)をつないだ贈り物

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<おわりに>
本投稿は2007年12月に他のブログでつづったものです。2013年7月に刊行される著書「奇跡はつばさに乗って」は、この原版ブログが元になっていますが、著書とブログ版は別のものです。ここでは、原版ブログの第1羽のみ公開させていただいております。上記の文と写真の転載はお断りしております

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